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【ビブリオエッセー】どこにいても心は自由 「レモンの車輪 はたちよしこ詩集」はたちよしこ著 まど・みちお絵(銀の鈴社) - 産経ニュース

 遠い昔、病院の待合室で何気なく開いた本。風邪で熱も高くて、つらくて仕方なかったから、それを紛らわすためだけにめくったページに、その詩はあった。はたちよしこさんの詩「レモン」だ。

 レモンのさわやかな匂いを含んだ風が吹き抜けた気がした。でもそれは、ほんの一瞬のことで、幼い私は、あまりの身体のだるさに本を閉じてしまった。

 あれからどれだけの歳月が経ったのだろう。新型コロナウイルスのため外出自粛の生活が続いていたある日のことだ。外は春の陽気で、桜の花がそよ風に舞っているのに見に行けない。「ああ、遠くへ行きたいなあ」。ふと、そうつぶやいたとき、あの幼い日に読んだ詩の一節が色鮮やかに浮かび上がった。

 「レモンは/遠くへ 行きたいのです/うすく切れば/それがわかります/うすく切れば/いくつもの 車輪…」

 薄く薄く切ったまん丸なレモンの車輪が転がっていく光景が見えた気がした。レモンの香りをふりまきながら、どこまでもどこまでも…。

 ほんの少し元気が出た。作者の名前も題名も覚えていなくて、断片的な詩の言葉からネットで調べて、本を購入した。

 いま、私の手元には、はたちよしこさんの詩集『レモンの車輪』がある。幼いころにたった一度、病院で読んだ詩と、再会できた。

 家にいても、病院にいても、どこにいたって心は自由だ。このレモンのように、どこへでも転がって行ける。

 久々の友に出会ったようにその詩集をめくりながら、私は思った。

 さいたま市浦和区 みゆ37

 【ビブリオ・エッセー募集要項】本に関するエッセーを募集しています。応募作品のなかから、産経新聞スタッフが選定し、月~土曜日の夕刊1面に掲載しています。どうか「あなたの一冊」を教えてください。

 投稿はペンネーム可。600字程度で住所、氏名、年齢と電話番号を明記し、〒556-8661産経新聞「ビブリオエッセー」事務局まで。メールはbiblio@sankei.co.jp。題材となる本は流通している書籍に限り、絵本、漫画も含みます。採用の方のみ連絡、原稿は返却しません。二重投稿はお断りします。

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June 16, 2020 at 10:09AM
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