新型コロナウイルスの直撃を受け、英国の劇場文化が存続の危機に直面している。米ブロードウェーと並び、世界的に有名なロンドンの劇場街ウエストエンドでも3月から休演が続き、全国で劇場の7割が年内に倒産するとの悲観的な見方も。下院は26日までに「英国文化の最大の危機」と訴え、政府に早急な対策を要求した。

「レ・ミゼラブル」などの人気ミュージカルを数多く公演するウエストエンドを中心に、本場英国の劇場には例年、世界各地から観光客が集まる。文化を管轄する下院委員会の報告書によると、2018年の観客は3400万人に上り、英国の人気スポーツ、サッカーのリーグ戦の観戦者を上回る規模という。

だが英政府は3月にロックダウン(都市封鎖)を導入。パブやホテルなどでは徐々に営業再開が認められたものの、演者や観客の社会的距離を保つのが難しい屋内劇場は従来通りに再開するめどが立っていない。業界大手は6月、年内の再開を断念すると発表した。

下院委によると、国内約1100の劇場では少なくとも1万5千以上の公演がキャンセルとなり、関連収入も含めると損失額は6億3千万ポンド(約850億円)を超す。劇場関連の雇用は29万人に上り、英国劇場協会は下院に対し、劇場や制作会社の7割が年内に資金繰りに窮し廃業するとの厳しい予測を示した。

英政府は7月上旬、劇場のほか美術館や映画、音楽、歴史的遺産など文化事業全般を対象に15億7千万ポンドの緊急支援を発表したが、下院委は「遅すぎるし小規模すぎる」と支援の強化を求めた。(共同)